幼い時からバレエを習っていた主人公ジョアンは、ハイスクール卒業後、ひょんなことからフランスの名門バレエ団の芸術監督の目に留まり、群舞ダンサーとして雇われる。
ある日、ゲストダンサーとして来仏したロシア人の天才ダンサー、アースランのリハーサルを盗み見し、その完璧さゆえに激情にかられて彼の化粧室に忍び込み、発作のようなセックスをしてしまう。そして去り際に、アメリカの住所を書き残す。
帰国後、天才的振付家のミスターK率いるニューヨークの名門バレエ団に採用されるが、やはりここでも群舞止まり。そんなジョアンのもとに、アースランから封書が届き始め、文通を続けるうちに彼の亡命の手助けをする羽目に陥る。当時は冷戦時代で、このあたりはヌレエフやバリシニコフなど、優秀な旧ソ連のダンサーたちの亡命事件とダブって興味深い。
幸い、カナダ経由で亡命は成功。アースランはニューヨーク入りし、ジョアンと同じバレエ団から華々しくアメリカデビューを果たす。二人は同棲を始め、ジョアンは亡命を助けた恋人として"時の人"になる。しかし二人の仲は続かなかった。天才アースランは自分と踊れない無能なジョアンに愛想をつかし、ジョアンを捨ててしまう。
ジョアンは自暴自棄になり、昔から彼女を心から愛し、理解してくれている幼馴染のジェイコブと肉体関係を持つようになる。結果、妊娠。ジョアンは潔く退団して結婚生活に入る。ジェイコブの仕事で一家はカリフォルニアに転居し、ジョアンはバレエスクールを主宰し、息子ハリーにも教え始める。
ハリーは成長するにつれ才能を発揮し、16歳になるとジョアンの古巣のバレエ団で特別レッスンを受けるようになる。大御所アースランの目にも留まり、それが要因となってジョアンの幸福な結婚生活が崩壊の危機に晒され始める。そして徐々に明かされて行くジョアンの秘密……想定外の衝撃のハプニングが展開して読者をびっくりさせる。だがジョアンはこの"修羅場"を真の愛の力で乗り越えていく。
本書の読みどころはまさにこのジョアンの成長した姿にある。ドラッグ、セックス、そして嫉妬が渦巻くバレエ界を突き抜けた先で、彼女はふつうであることの幸せ、人を愛することの意味を見つける。