形態:ハードカバー 191x130mm 346頁
定価:本体2,250円(税別)
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「彼女はバランシン流に訓練された、理想的なバランシンダンサーです」
──ミスター・Bは自分の妻タナキル・ル・クラークをこのように褒め讃えていました。小さな頭、華奢な骨格、長い腕と脚の彼女は、まさにこの天才振付家のために生まれてきたようなバレリーナだったのです。
亡命ロシア人で、アメリカに渡ったときにはすでに“バレエ界のシェイクスピア”と世界中にその名を轟かせていたジョージ・バランシン。その彼の愛を勝ち取り、五番目(正式には四番目)の妻となったタナキルは、バレエ団でベストパートを踊るだけでなく、ファッション雑誌のモデル、テレビ女優、また著名な音楽家、文学者、知識人と交流する社交界の花形として、華麗で多忙な生活を送っていました。
ところが悲劇が彼女を襲います。1956年、公演先のコペンハーゲンで、27歳のタナキルは高熱に倒れ、死のような眠りから目覚めると、長く美しい脚が動かなくなっていた。小児マヒ──彼女は一夜にしてバレリーナ生命を絶たれてしまったのです。
バランシンは仕事を辞め、愛する妻の介護に専念します。タナキルの肉体に筋力を甦らせようと、彼独自のエクササイズを考案し、リハビリの手助けもします。当時の二人は、これまでになかったほどの強い絆と愛で結ばれていました。
しかし、もう二度と歩くことはできないと悟ったタナキルは、これからの自分の生き方を模索し苦しみ、バレエ団に復帰したバランシンは、妻よりも若く新鮮で優秀なダンサーたちのための振付に没頭。二人のあいだには亀裂が生じ始めるのです。
新たな夢を追い求めるタナキル、そして自分の芸術に身を投じるバランシン……。
神と謳われた天才振付家
その神の創造力を喚起した女神
──これは二人の真実の愛の物語──